« 2006年10月 | メイン | 2007年02月 »

2006年11月16日

ルイジ・ノーノ「海の航跡」luigi nono

海の航跡~ルイジ・ノーノの芸術~海の航跡~ルイジ・ノーノの芸術~
ノーノ

TDKコア 2006-06-21
売り上げランキング : 70837

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


生涯、前衛であり続けたイタリアの作曲家。
彼の人生を、アバド、ポリーニという朋友が語る。
シェーンベルクの娘であり、ノーノ夫人でもあるヌリア・ノーノからは、
僅かではあるが、彼の普段の様子を聞くことができる。
 
 

残されたノーノのポートレートなどをみると、
どれも眼光鋭く、
どれだけ厳格な姿勢で創作をつづけてきたか
写真からだけでも伺い知ることができる。


イタリア共産党員としても活動し
政治的メッセージを込めた作品を多数発表している氏。
このドキュメンタリーの中でも


「ジージ(ノーノ)は、あらゆる革命が好きだった」


と証言されているし、
さぞかし、近寄りにくい人なんだろうなぁ。。。
氏の作品をきく前には、そんな想像をしていた
(僕が興味を抱いたときは既に故人だったが)。


でも、あるとき手にした本の中での氏のコメントをみて
印象はがらりと変わった。


現在は絶版のようだが、90年代に
「現代音楽のポリティクス」という書籍が発表された。
ノーノのコメントを読みたくて手にしたのだが、
その中で唯一覚えている一節があるので紹介したい。
既にその書籍が手元にないため、
正確な引用ではないことを予めお断りする。


来日当時、東京大学で催されたレクチャーでのやりとり。
参加者の女子学生が「現代音楽の楽しみ方」について
質問を投げかけたときの、ノーノの回答の一部分。


質問に対して真剣に、自分の意見を述べた最後に、こう、一言添えた。


「だけど、あなたみたいなチャーミングな方なら、
 現代音楽なんて知らなくても楽しく生きていけますよ」


たしか、笑顔を添えて、こう応えた。。。
と、記されていたような記憶がある。


僕はこの発言を、嫌みとは捉えなかった。
なんとも気の利いた、素敵なコメントだな。。。そんな風に思った。


たしか20代半ば、あらゆる音楽的刺激を求めていた時代に目にした一節。
正直、その書籍で覚えているのは、ここだけ。
けれど、覚えていられたのが唯一ここだけだったことを、
僕は幸運に思う。


ノーノの作品については、この本に出逢う以前にもレコードで沢山聞いていた。
とても覚えられるメロディが登場するようなものではない。
「音塊」。。。そう、音そのものの響きを楽しむような。。。
だが、その中に見え隠れする美しい響きがなんとも素晴らしい。
またに思い出しては、聞き返す。。。そんな接し方。


世界には、こうして想いを紡ぎ続けている人たちが沢山いる。
このドキュメンタリーに登場してくる三人の男達。。。
そのうち、
未だ、熱い想いを音楽に乗せて届け続けている二人の巨匠の演奏を
今年、拝むことが出来た。
それも、二人が同じステージに立って。。。


これは、この時季にまた、ノーノを聞き返す周期が訪れたということだろう。
きっと、今の僕に、何か忘れかけていたことを
再び語りかけようとしているに違いない。


それにしても、同じ時代に、同じ志を抱く作曲家・指揮者・ピアニストが、
しかも、同じイタリアという国にいた事実。。。
それも、どれもみな、世界トップレベルの3名が同時に。。。
こんなことは、かつて歴史上、あったであろうか?


特にアバド、ポリーニは、クラッシックの名曲のみならず、
現代の作曲家による作品も多数紹介してきた。
ノーノの曲が演奏され続けたのも、
きっと、彼ら二人が側にいたからに違いない。
今も世界のどこかで、それぞれがノーノの作品を紹介し続けている。
その功績は非常に大きい。


このDVDでも紹介されている、ポリーニの演奏会の模様。
ノーノのピアノ曲を紹介すると同時に、
音楽の歴史の流れの中で、
同じ系譜に属すると彼が考える作品も同時に紹介している。


ここでは、マレンツィオ「5声のマドリガル曲集 第9巻」をピックアップ。
シェーンベルク合唱団によるリハーサル風景が収められている。


至極印象的だったのは、その合唱のクライマックスを迎える場面。
ポリーニが、感極まって涙をこぼしたのだ。


抱き続ける想いが熱いからこそ、多くの聴衆にその想いが届くのだな、
と、世界の片隅でちっぽけな創作を行う身として、感じた次第。


感情を抑制したクールなものがカッコいい。。。
そんな誰かの受け売りのようなことを考えていた青い時代は
とうの昔に終った。


これからの僕は、益々、激情系に突き進んでいく予感。。。
もちろん、何事も「バランス」が大切だけど。


さぁ、その想いを受け継ぐのは僕たちだ。
仕える分野は多少違えど、僕も彼らと同じ音楽を志した一人。
先人が残してくれた大いなる遺産に敬意を表し、
今、自分にできることに専念しよう。


僕に出来ることは何なのか?
もうすぐその答えがみつかるはず。
きっと、ね。

2006年11月09日

展示のお知らせ その2 《NSKベアリングアート展》


今秋参加する、2つ目のグループ展のお知らせです。

====================

Smooth Sailing for BEARING

NSKベアリングアート展

会期 11月22日(水)〜26日(日)
   11時〜20時
   注)22日は、18時クローズ

会場 スパイラルガーデン(青山スパイラル1F)
主催 日本精工株式会社
プロデューサー 赤池学(ユニバーサルデザイン総合研究所所長
企画制作 スパイラル/株式会社ワコールアートセンター
入場料 無料


《出展作家》順不同
 日比野克彦(アーティスト)
 佐藤好彦(アーティスト)
 さとうりさ(アーティスト)
 名和晃平(アーティスト)
 松田直樹(アーティスト)
 AGOSTO creation office(デザイナー)
 印デザイン(プロダクトデザイナー)
 杉原有紀(アーティスト)
 しりあがり寿(漫画家)
 児島サコ(アーティスト)
 清水寛子(アーティスト)
 CLIP(建築家)
 h.o(アーティストユニット)
 津村耕祐(ファッションデザイナー)
 鈴木康広(アーティスト)
 川瀬浩介(作曲家)http://www.kawasekohske.info/


====================


ベアリングって何?


そんな疑問を頂かれた方は、「続きを読む」をクリック!
 
あわせて、川瀬浩介出展作品「ベアリング・グロッケン」について
またまた熱く語っております。
 
 

ベアリングって、ご存知ですか?
きっと、存在さえご存じない方がほとんどでしょう。


けれど、我々の生活には、とっても密接に関わっています。
今、こうして我がブログをご覧の皆さんが使っているパソコン。
その中にも沢山、ベアリングが入っています。

その他、家電にも。。。。
エアコン、電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機。。。。

自動車だって新幹線だって、ベアリングなくしては
あれだけスムースな動きを実現することはできません。


我々の生活は、ベアリングによって支えられているといっても過言ではないのです。


そんな、
普段は日の当たらない存在である「ベアリング」を使って、
アート作品を仕上げてみよう!


これが今回の展覧会のテーマです。


世界のトップ・ベアリング・メーカーのひとつである日本精工。
同社が誇る、優秀なエンジニアの方々との共同制作により
私、川瀬浩介は、巨大な「グロッケン」を制作しました。


その名も「ベアリング・グロッケン」。
自動演奏により曲を奏でるベアリングによる楽器です。


ベアリングの内部には、スムースな回転を支えるための「球」が収められています。
その球の反発力を利用して、グロッケンの鍵盤を鳴らす。。。
という仕組みです。


この作品では、鍵盤の上を無数の球が弧を描きながら、跳ねていきます。
一見、パチンコ玉と変わりないようにみえるのですが、
その表面を電子顕微鏡で比較すると、雲泥の差があります。


ベアリングに使われている球は、
「真球」に限りなく近い状態で磨き上げられているのです。
とてもわかりやすくいうと「すごく、ツルツル」(笑)な状態。
あまりにツルツルすぎて、うっかりすると、つまめないほどです。


こうした「すごく、ツルツル」の球を使うことによって、
摩擦を限りなくゼロに近づけ、
ベアリングそのものの寿命を永くし、
かつ、摩擦による騒音も抑える。。。そんな効果があるそうです。
みなさんの部屋にあるエアコンが、音もなく動作し続けられるのは、
こうした技術力によって実現されているわけですね。


真球に限りなく近い球を水平な面に放り投げると、同じ軌跡を描いて跳ねていきます。
しかも、一直線上に直進していくのです。
パチンコ玉では、こうはいきません
(いわば、パチンコは、その球の歪さを利用してゲームにしていると言えます。
 表面がデコボコしているがゆえ、球が右往左往に跳ねる、と。。。)。
「同じ軌跡を描いて跳ねていく」という、
ベアリングに用いられている球の特性を楽器演奏に活かしたのが、
今回発表する「ベアリング・グロッケン」なのです。


とにもかくにも、百聞は一見にしかずです。


2006年11月8日、日本精工藤沢工場にて、
世界初演(笑)をこの目で確認してまいりました。


とにかく、愛おしかった。


僅か90秒ほどの楽曲ですが、聞き終わった後、スタッフ全員から拍手が!
僕も思わず、ブラボー! と叫んでしまいました(笑)。
(できたら湘南海岸まで突っ走って、叫びたいところでしたけど)


技術的に、かなり無理なお願いをしていたので、
実現できるかどうか、実は不安だったのですが、
流石は世界のトップメーカーを支えるエンジニアの皆さんです。
完璧に仕上げてくださいました。
やはり、仕事は、超一流の皆様とするにかぎりますね(笑)。


想像していたところでは、
もっとリズムもタイトでズレも一切なく、ガチガチの演奏になるのかと思いきや、
自然の力でしょうか? 空気抵抗などが上手く作用してくれたのか、
なんとも味わいのある、「人の息吹」を感じる演奏を再現してくれました。


球を発射する装置が4系統。
鍵盤も4音の配列で4パート分あります
(いわば、ベアリング・カルテット!・笑)。


発射タイミングはコンピュータで制御されているものの、
初速度を与えているわけではないので、
発射後は、当然、自由落下していきます。
自然の法則に従っていくと、不思議なことに、絶妙な味わいを生み出し。。。
たまにミスもあったりするんですが、それが何とも、愛おしく。。。
まるで、我が子を眺めているようでした
(未だ、本当の我が子は現れる気配さえありませんが。
 もちろん、嫁さんが現れる気配も。。。)。


11月8日、今日は丁度、日本精工の創立記念日だったそうです。
そんな記念すべき日に、初めて調べを奏でたベアリング・グロッケン。。。
それを実現してくださったエンジニアの皆さん。
そして、滞りのない運営をしてくださったスタッフの皆さんに感謝いたします。
その目撃者となれた自分は、本当に幸せ者です。


本当の世界初演は、22日夜のパーティーのときに。
今日の演奏も22日の昼間の時間帯も、いわば「公開リハーサル」です。


皆さんも、その目撃者となってみてはいかがでしょうか?(笑)


会期中は、恐らくずっと会場に張り付いていることでしょう。
この作品。。。こんなに夢にあふれているというのに、
想像を超えるくらいの、絶妙なバランスで成り立っているんです。
ちょっとでも触ったりされると、演奏が崩壊してしまう恐れがあります。
僕が番人として、我が子を守らなくてはいけません(笑)


是非皆さんも、我が子に手を出そうとする輩を見つけたら、注意してください。


「あのデブのオッサン、怒ると怖いよぉ」


ってね(笑)。


だけど、今回の作品、とくに子供が喜びそうなんで。。。。
彼らをどう防御するかが課題になりそうです(苦笑)。


子供には夢を、大人にはロマンを!


我がモットーが、顕著に現れた作品となりそうな予感。。。
これをみて「日本精工に入りました!」なんて言ってくれる優秀な若者がでてくれたら
こんな僕でも(あっ、これは禁句でした・苦笑)、
世の中の役に立っている気分に浸れるかもしれません。
そして、ものづくり大国・日本の未来も、まだまだ明るいものとなることでしょう。


本番へ向けて、もう少し調整とお化粧が施される予定。
披露できるその日まで、あと2週間。。。。
こんなに楽しみな展示は、本当に久しぶりです。


皆様も是非、たっぷり期待していてください!
そして、このときめきを、ともに共有しましょう!(笑)

最後に。。。


ベアリングという単語を英和辞典で調べてみると、
実に様々な意味を持っていることがわかります。


bearing(三省堂「グローバル英和辞典」より)
態度・ふるまい、関係・つながり、方角、忍耐・我慢、実り、出産、
軸受け=ベアリング


作品アイデアのプレゼンテーションのため
何かのきっかけをつかみたくて、辞書を引いていたところ。。。
その言葉の意味を知って、僕はハッとさせられました。


今の自分自身に向けて。。。
そして、今の世の中に対して、足りないもの全てを
この「ベアリング」という言葉ひとつが表現している、と。。。


今回の展覧会では、
参加作家の独自の解釈により、
ベアリングの普段の様子とは違った側面が表現されています。
その様々な「表情」を通じて
皆さんも、様々なことに想いを馳せていただければ光栄です。
 
 
会場でお逢いできることを楽しみにしています。
 
 
川瀬浩介

2006年11月08日

展示のお知らせ その1 《DAF東京2006》

$##

$ photo (c) Wacoal Art Center/Spiral Photography : Katsuhiro Ichikawa
# photo (c) KAWASE Kohske


今秋、2つのグループ展に参加します。


まずはその1。


デジタルアートフェスティバル東京2006


についての情報を紹介します。


http://www.daf-tokyo.jp/
http://www.daf-tokyo.jp/artist.html


会場は、お台場にあるパナソニックセンター東京。
2006年12月2日(土) 〜 12月6日(水)
10:00〜19:00
(2日20:00、6日18:00まで)


今回は、上演スケジュールが少し複雑なので、
また詳細が確定した段階で、ご紹介します。

出展作品について、ちょっと熱めに語ります。
続きは「続きを読む」をクリック!
 
 

このグループ展では、僕の人生を色んな意味で変えてくれた作品、


「Long Autumn Sweet Thing」


を展示いたします。


「音と光のインスタレーション」
「光のための音楽」
「変容する絵画」
「音と光だけで綴られた映画」


などなど。。。
様々、形容されております。


この作品については。。。。


http://www.kawasekohske.info/SPIRAL/
http://www.kawasekohske.info/UPLINK/
http://www.kawasekohske.info/BEAMS/


をご覧下さい。


ご来場いただいた皆様の声も集めてあります。

http://www.kawasekohske.info/jp/works/last@showcase/voices1.html

この作品を制作していた時期のプロダクションノート(制作日誌)がご覧いただけます。
あいかわらず、長いです(苦笑)。
ご賞味ください。


●プロダクションノート Long Autumn Sweet Thing for 3rd SICF

http://www.kawasekohske.info/blog/production_notes/long_autumn_sweet_thing_for_3rd_sicf_20012002/


●プロダクションノート Long Autumn Sweet Thing for SPIRAL

http://www.kawasekohske.info/blog/production_notes/long_autumn_sweet_thing_for_spiral_2002/


意味がありそうでなさそうな、なんとも素敵なタイトルの作品。。
僕にとっては、沢山の想いを込めたタイトルなんですが。。。
その本当のところは。。。ナイショで(笑)。
僕とよっぽど仲良くなった人だけ、知ることが出来ます。


実は、その理由の全貌は、某公共放送のアーカイブとして残っているはず。。。
消されていなければ。。。ですけどね。


冬の始まり。。。
いや、まさに、いつもよりもちょっとだけ長い秋の終わりに、
この作品を味わってみてください。
きっと素敵な時間が過ごせることでしょう。
 
 
 
あなたの時間を、僕のために、ください。
 
 
 
最後に、今回の展示のために書いた作品解説のようなテキストを紹介します。


川瀬浩介「Long Autumn Sweet Thing」


私の中に宿る「究極のロマンティシズム」。
その溢れんばかりの思いだけを頼りに「美」を追求し誕生した
「Long Autumn Sweet Thing」。

これは、作曲家・川瀬浩介が綴った楽曲に、
自らが考案した巨大な照明オブジェから放たれる光の明滅が呼応し、
全6曲45分に渡って、音と光による「物語」を展開していく「光のための音楽」。

ここにあるのは、形もない、意味もない、「音と光」…ただそれだけ


——そっとみつめていてください——


「音と光の抱擁」を受けるとき、
目の前の光景が、きっとあなたの心象に語りかけてくることでしょう。
そう、ここで繰り広げられる物語は、
あなたの心の中に棲む「記憶のドラマ」なのです。
そこにどんな風景が広がるのか…
そっと私に教えてください。

http://www.kawasekohske.info/