ルイジ・ノーノ「海の航跡」luigi nono
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生涯、前衛であり続けたイタリアの作曲家。
彼の人生を、アバド、ポリーニという朋友が語る。
シェーンベルクの娘であり、ノーノ夫人でもあるヌリア・ノーノからは、
僅かではあるが、彼の普段の様子を聞くことができる。
残されたノーノのポートレートなどをみると、
どれも眼光鋭く、
どれだけ厳格な姿勢で創作をつづけてきたか
写真からだけでも伺い知ることができる。
イタリア共産党員としても活動し
政治的メッセージを込めた作品を多数発表している氏。
このドキュメンタリーの中でも
「ジージ(ノーノ)は、あらゆる革命が好きだった」
と証言されているし、
さぞかし、近寄りにくい人なんだろうなぁ。。。
氏の作品をきく前には、そんな想像をしていた
(僕が興味を抱いたときは既に故人だったが)。
でも、あるとき手にした本の中での氏のコメントをみて
印象はがらりと変わった。
現在は絶版のようだが、90年代に
「現代音楽のポリティクス」という書籍が発表された。
ノーノのコメントを読みたくて手にしたのだが、
その中で唯一覚えている一節があるので紹介したい。
既にその書籍が手元にないため、
正確な引用ではないことを予めお断りする。
来日当時、東京大学で催されたレクチャーでのやりとり。
参加者の女子学生が「現代音楽の楽しみ方」について
質問を投げかけたときの、ノーノの回答の一部分。
質問に対して真剣に、自分の意見を述べた最後に、こう、一言添えた。
「だけど、あなたみたいなチャーミングな方なら、
現代音楽なんて知らなくても楽しく生きていけますよ」
たしか、笑顔を添えて、こう応えた。。。
と、記されていたような記憶がある。
僕はこの発言を、嫌みとは捉えなかった。
なんとも気の利いた、素敵なコメントだな。。。そんな風に思った。
たしか20代半ば、あらゆる音楽的刺激を求めていた時代に目にした一節。
正直、その書籍で覚えているのは、ここだけ。
けれど、覚えていられたのが唯一ここだけだったことを、
僕は幸運に思う。
ノーノの作品については、この本に出逢う以前にもレコードで沢山聞いていた。
とても覚えられるメロディが登場するようなものではない。
「音塊」。。。そう、音そのものの響きを楽しむような。。。
だが、その中に見え隠れする美しい響きがなんとも素晴らしい。
またに思い出しては、聞き返す。。。そんな接し方。
世界には、こうして想いを紡ぎ続けている人たちが沢山いる。
このドキュメンタリーに登場してくる三人の男達。。。
そのうち、
未だ、熱い想いを音楽に乗せて届け続けている二人の巨匠の演奏を
今年、拝むことが出来た。
それも、二人が同じステージに立って。。。
これは、この時季にまた、ノーノを聞き返す周期が訪れたということだろう。
きっと、今の僕に、何か忘れかけていたことを
再び語りかけようとしているに違いない。
それにしても、同じ時代に、同じ志を抱く作曲家・指揮者・ピアニストが、
しかも、同じイタリアという国にいた事実。。。
それも、どれもみな、世界トップレベルの3名が同時に。。。
こんなことは、かつて歴史上、あったであろうか?
特にアバド、ポリーニは、クラッシックの名曲のみならず、
現代の作曲家による作品も多数紹介してきた。
ノーノの曲が演奏され続けたのも、
きっと、彼ら二人が側にいたからに違いない。
今も世界のどこかで、それぞれがノーノの作品を紹介し続けている。
その功績は非常に大きい。
このDVDでも紹介されている、ポリーニの演奏会の模様。
ノーノのピアノ曲を紹介すると同時に、
音楽の歴史の流れの中で、
同じ系譜に属すると彼が考える作品も同時に紹介している。
ここでは、マレンツィオ「5声のマドリガル曲集 第9巻」をピックアップ。
シェーンベルク合唱団によるリハーサル風景が収められている。
至極印象的だったのは、その合唱のクライマックスを迎える場面。
ポリーニが、感極まって涙をこぼしたのだ。
抱き続ける想いが熱いからこそ、多くの聴衆にその想いが届くのだな、
と、世界の片隅でちっぽけな創作を行う身として、感じた次第。
感情を抑制したクールなものがカッコいい。。。
そんな誰かの受け売りのようなことを考えていた青い時代は
とうの昔に終った。
これからの僕は、益々、激情系に突き進んでいく予感。。。
もちろん、何事も「バランス」が大切だけど。
さぁ、その想いを受け継ぐのは僕たちだ。
仕える分野は多少違えど、僕も彼らと同じ音楽を志した一人。
先人が残してくれた大いなる遺産に敬意を表し、
今、自分にできることに専念しよう。
僕に出来ることは何なのか?
もうすぐその答えがみつかるはず。
きっと、ね。
