Happy Together
ずいぶん昔…たしか、二十歳くらいのころだったろうか? こんなタイトルの卒業制作を手がけた気がする。
僕にとっては、学校閉鎖に伴って
「致し方なく中退扱いになるんてそりゃないぜ制作」
だったんだけど(苦笑)。
バブル崩壊のあおり…ほんとに、ずいぶん昔の話だ。でもあのころから既に、困難な状況でもあきらめず、明かりを灯し続けようとする質だったみたい。ダメと思ったらさっさとあきらめて、別の道を探せるようなら、きっと、今とは別の幸せを手に入れていたんだろうなぁ(遠い目)。あっ、もちろん、今の生き方も、正解だったけどね(たぶん)。
そんな回想に耽ってしまうほど、今夜はなんだか、不思議な気分の夜だった。
最寄の街にできた新しい劇場へお呼ばれして、ステージを鑑賞してきた。「生」の迫力をまざまざと見せ付けられた感じ。そのときその場でしか味わえない空気…録音された、いわば「固定された音楽」を手がける僕にとっては、普段なら、こうした現象を目にすると、深いジェラシーが湧き上がってくるものだ。でも、今夜はそんなちっぽけな嫉妬心は、主人の圧倒的な存在感に吹き飛ばされた。
そして、何より興味深かったのは、僕の中に沸いてきた心情。冒頭のシーンを目にしたとたん、ステージの内容とはきっと関係がないような事柄が頭に浮かんできた。それはきっと、今日、久しぶりに再会した人たちが多かったからに違いない。再会の瞬間には感じなかったことを、ステージに立つ主人の姿がトリガーとなって、気づかされたんだろう。
「彼が僕らをつないでくれているんだ」
会場では珍しく、かなり大勢の知り合いに遭遇した。ほとんどの方が、僕に気づいて声をかけてくださって…ありがたい。無駄にデカい身体をしていた甲斐は、こういうときに発揮しなくちゃ、ね(苦笑)。
そんな大勢の同志たちと、人生で一度しかない「この瞬間」を共有する…それだけでも、もう、ロマン派の僕はかなりうっとりしてしまいそうだった。
ステージが始まる。
冒頭のシーンを見つめていたとき、ふと、
「同じ時代に、生きているんだな」
そんなことが頭をよぎった。
この空間を、この時間を、この一瞬を共有している…。それぞれの場所で、高みを目指す多くの同志達と、こうして顔をあわせることはなかなか難しい。その機会を与えてくださったこと…それが何よりも嬉しかった。自分が作品展示をする場合なども、きっとそうなんだろう。結局僕は、時間を共有する機会を求めて、創作を続けているのかもしれない。
僕は、ここにいる。
君は、ここにいる。
僕達は、ここにいる。
これは、自分の作品「Long Autumn Sweet Thing」の中に取り入れたテキスト。至極当たり前の内容だけれど、同じ時代に偶然生まれて、そうして出逢えたことの喜びを、素直にあらわした言葉だ。
いつでも会えるから、また今度…じゃなくて、今、この瞬間は二度と戻らない。明日はどうなるか、誰にもわからない。だから、今という瞬間を強く意識しながら生きたい。
想いは、共有できて初めて、喜びに変わる。
そのために、僕は、創り続けていく。
今はまだしらない、たくさんの人たちに出逢うために。
