NHK教育「からだであそぼ」にて放送中のコーナー「踊る内臓」。既に、予定されている全12作品中6作品(心臓、肺、胆嚢、胃、肝臓、腎臓)が放送された。残る6作品中、6月までに3作品が完成している。あとは放送を待つのみ。夏の間には放送されるのではないかと思う。
開次さんのダンスの収録は、既にすべて終わっている。2月から撮影が始まって、およそ一ト月に一度のペースで行なわれた収録…この期間は、あっという間だった。だけど、冷静に振り返れば、ずいぶん時間が経っている。なにせ、初回の収録の日は、雪だったんだから。今は、去年の今頃と同じように、汗だくになりながら作曲、録音をしている。
この7月頭から、最後の3作品のための作業に専念…本来はその予定だったのだが、急浮上した案件のためにあれこれリサーチをせねばならず、だいぶ時間が奪われてしまった。もちろん、頭の中は「踊る内臓」のことばかり…ようやく今日から手を動かしてみた。そしてつい先ほど、ようやく一つ、新作の楽曲を完成させたところだ。
今回の作品も、楽しんでもらえる内容に仕上がった(何を手がけていたかはもちろん、放送されるまでナイショ)。いつものように、凄まじいミラクルに直面し、思わず、雄叫びに近い「爆笑」がこの部屋に充満した。充満…といっても、もちろん、僕独りの笑い声だけだが。でも、その瞬間、このところのあれこれが、一気に解放された気がした。爆笑によるカタルシス! といったところか? 僕はいつだって、音楽によって救われる。
さて、今回の「踊る内臓」のヒミツ…そんな「ミラクル」が、いつもどんな様子なのか? その当たりについて触れてみたい。まずは前回「その1」の続き…作曲のきっかけをどこからつかむか? それについて紹介したい。しかしその実は…意外に簡単なことだったりする。
作曲のきっかけは、開次さんの動きと作詞家・暖簾屋 丈さんの歌詞の世界観との共通点を探すことから。送られてきたビデオをみながら、ユニークな動きをしているところで歌詞の中にある印象的な言葉がちょうどいいタイミングでリンク/シンクロするように考えていく。
テンポを決めて曲調を決めて…という手順で進める場合もあるが、大方、「鼻歌」が基本となっている。歌詞を頭にいれた状態で映像を見ながら、ふんふんふん〜という感じでやってみる(端から見れば、相当滑稽な様子だろう)。すると、自ずとテンポと曲の構成が見えてくる。「ダンスと歌詞の世界観から音楽が呼び覚まされる感覚」とでもいえばいいのか? 僕はただ、その呼び覚まされた感覚に従って、具体的に音を置いていくだけ…そんな感じで作曲が進められていく。
即興で踊られたダンスだから、さぞかしテンポなんてないもの、と思うかもしれないが、これや意外に、ビートに乗って踊られていることに気づく。それが作曲を進めているとよくわかる。もちろん、そのビートが4拍子のときもあれば7拍子だったり、はたまたもっと複雑な場合だったり…もちろん、完全なるフリーの状態で踊っていると思われるシーンもありと様々だが、どうにも対処できないほどのテンポでダンスが進行しているわけではないということがよくわかる。
さらに不思議なのは、どうにも困って(アイデアが浮かばなくて)踊りのテンポや拍子を最初から無視して作曲を進めた場合でも、結果、踊りとピッタリ寄り添った音楽が完成することだ。「これは7拍子の曲にしてみよう」などと予め計画して進めていても、ちょうどいいところで、言葉と音楽と踊りがリンクするのである。最初に放送された「心臓」はまさにその好例。「どう〜く どう〜く どく ど ど」というボイスビートのパートが、開次さんが胸を突く動きと丁度リンクしたのだ。
その「奇跡の瞬間=ミラクル」が最も象徴的に映るように、その前後を調整していき、完成したときには、あたかも「音楽を聴いて踊っている」かのように仕上がるよう心がけている。あわせすぎても不自然だし、独立させすぎても駄目…あっているような、あっていないような…音楽を聴きながら踊ったようにも見えるけれど、妙にピッタリあっている場所もあったり??? なぜ??? そういったところを狙って作曲を行なっている。さらに付け加えれば、全12作品を並べてみたときにバランスがとれるように、といった配慮もしている。曲調や歌の雰囲気、アンサンブルに登場させる楽器の選別…など。
もっと驚かされたことがある。その「心臓」は、本番の録音より以前に、開次さんの別のダンス映像【注】を使って完璧なデモ曲を作っていたのだが、新たに、番組用に撮影されたダンスが、そのデモ音源のリズム、テンポに見事に合致していたのだ。思えば、これが「最初のミラクル」だった。
【注】2007年、水戸芸術館で催されたひびのこづえ展にて展示/上映されていた、開次さんが舞う映像「内臓の服」。展覧会では、無音の作品として展示された。もちろん、振付は異なる。
一月末、デモを仕上げた朝、独り相当な手応えを得たのだが、録音ではよくあることで、デモが完璧すぎると、本番でそれを越えられないことがある。「3つのデモ曲」を仕上げた後、高い完成度をもってこのシリーズ作品が完結できると確信していたが、唯一心配だったのは、その点だけ。ワケあって「心臓」だけ、本放送より先に完成させる用途があったため、一番最初に「心臓」だけ一足先に本番の録音に入ったのだが、デモ以上の仕上がりとなったことは言うまでもない。完成直後から綴った一連のプロダクションノートに書いた通り、たとえ望む反響が得られなかったとしても、この出来事だけをもって満足できる…そう思えるほどだった(ちなみに、その「生活ほっとモーニング」での放送分と「からだであそぼ」の「心臓」は若干バージョンが異なる。もちろん、後者の方が自分好みの仕上がりになっている)。
ここから、続く「肺」「胆嚢」「胃」「肝臓」「腎臓」…いずれも同じ発想で作曲を進め、何度も繰り返されるミラクルを目の当たりにし続けてきた。そんな時間が、もうじき、終わろうとしている。
ちなみに「3つのデモ曲」とは、「心臓」「肝臓」…そして今日、未明に完成させたばかりの「○○」。既に初回放送を終えた「心臓」「肝臓」も、そしてこの「○○」も、「3つのデモ曲」はいずれも、デモを越える内容で完成をみた。この「○○」も然り、である。放送されるのは…秋口か? 冬の始まりか? それとも来年か? いつになるのだろう? とにかく、一刻も早く見てもらいたい。
今日、この段階までで、「踊る内臓」全12作品中、10作品目までの作曲を完了させたことになる。今月中に残る2つを完成させる予定だ。全て完成したところで、続く「ヒミツ」を記していこうと思う。今度は、各作品の詳細についてアレコレと綴るつもりだ。それまでに、現在、再放送されている「踊る内臓」のこまれでのラインナップを是非、実際の放送でおさらいしておいてもらいたい。
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「踊る内臓」のヒミツ
川瀬浩介プロフィール