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2008年11月25日

FINALE

 「心ある機械たち」展@BankART 1929も、いよいよフィナーレを迎える。

 いくつか年内に終えなければならない業務も残しているが、個人としての大きな企ては、これにて終演となる。
 
 

 
 思えば今年も長い一年だった。仕事の内容は充実していたように思うけれど、人としては、なんら成長のあとはなかったように感じる。克服しなければならなかった問題も、やっぱり置き去りにしてしまったままだし、あの日から、全てにおいて「落第」のままに変わりはない。もう、それについては、自分自身、言葉もないほどの気分である。

 それに引き換え、相変わらず、プロフィールだけは充実していくのが滑稽だ。これが僕の人生の大問題点。プロフィールと実情が全く釣り合っていないんだから。どうにかしなければ、と、悪戦苦闘して早何年? 僕に限らず、今を生きる誰もが、こうして現実に抗い続けているのだろう。

 奥歯を食いしばる日々は、果てしなく続きそうだ。しかしそろそろ噛み締める力を緩めないと…バラバラにしてしまいそう。限界はとっくに越えているはずだから…。

 ゆっくりぼちぼち一歩ずつ——自分のペースをもう一度見直す必要がありそうだ。
 
 

2008年11月03日

Long Autumn Sweet Thing, Again

 何ひとつ、間違ってはいなかった。
 
 

 
 9月13日から始まった「心ある機械たち」も、ようやく折り返しを過ぎて、あと一ト月となった。
 
 にぎわいが予想される週末前には、都合がつく限り作品のメンテナンスにいくようにしている。特に大きなトラブルに見舞われたことはないのだが、いくら機械制御の作品といっても、面倒を見てやるだけで調子が安定したりするから不思議だ。だから手間は惜しまない。幸い、横浜は通える距離だから。

 11月2日。晴天の特異日だといわれる文化の日の前日。この日も見事な秋晴れに恵まれ、さらに3連休の中日ということもあってか、横浜トリエンナーレはオープニング以来の最高潮のにぎわいだったそうだが、なぜかBankART1929はその日、休館。館が入るビル全体の保守管理が行なわれるとのことで…残念。その日の夕方、新宿で打合せがひとつ(新宿もすごい人出で、予定していた事務用品の買い物をあきらめた)。その後、横浜まで足を運んで、それぞれの作品の様子をみることにした。

 19時過ぎ。横浜到着。保守点検が終わったばかりということもあって、ビル全体の静けさは、格別のものがあった(この、何ともいえない虚無感がたまらなく好きだ)。「心ある機械たち」と銘打つ展覧会だけあって、いつもは様々な作品の動作音が空間を交錯しているが、今日は全てが沈黙している。聞こえてくるのは、外を走る車の走行音と自分の呼吸音くらい。エレベータが昇降する機械音も、今日に限っては、何かを物語っているかのようにさえ聞こえてくる。

 独り、静まり返ったギャラリー空間でメンテナンスを開始。今日は特に、3階に展示してある「Long Autumn Sweet Thing」の起動/終了を制御しているタイマーの設定し直しに出向いたのだが、なんと、作品を目の前にすると、既にキチンと動作をしていたのには我ながら驚いた(つまり、光り輝いていた)。そう、停電後に自動的に再起動するようなシステムを組んでおいたことをすっかり忘れていた。思えば、この作品を最初に発表した2002年の段階では、途中、何度も演出が停止するトラブルに見舞われ、その管理のために展示期間中付きっきりで、終わる頃には疲弊しきっていたのだが、いまや、トラブルはほぼなくなっていて、とても安心していられる。設定した時刻になると自動的に演出をスタートし、設定時刻に停止するプログラムで、今回、ノン・トラブル最長記録を更新中だ。

 タイマーのセットし直しは、わずか数分で完了。そのとき時刻は、19時25分。連日演奏が終了するのは、19時45分(会場は19時閉場だが、その後、関係者がくることがあるらしいので延長している)。特別このあとの予定もないので、作品の動作チェック、という名目で、久しぶりに、作品終盤の20分をみることにした。

 設営のときにはもちろんチェックのため、一通り目を通しているのだが、実際のところ、ほとんどこの作品を見ることはない。この作品と対峙することは、僕にって、かなり酷な時間となるからだ。とにかく、様々な想いを詰め込んだ作品だけに、見るたび、心揺さぶられる。制作期間中も、嗚咽してしまうほどの心境で足掛け2年ほどかけて進めてきたほどから、第一段階完成後はなるべく距離をとるようにしているというわけである。

 陽光の中に舞い散る粉雪のような光の表情を見せるpart 3の終盤から、繋がらない電話の音がなり続けるpart 4、僕の声を忍ばせて僕なりのデュエットを表現したpart 5、そして光の彼方へと消えてゆくコーダ:part 6…およそ20分間——いつかのときと同じように、色々な想いが交錯していった——終演。

 この一ト月ほど抱いていた迷いは、無用のものだった——なんて美しいんだ!——それだけで充分なんだ。心配することはない。何も間違ってはいなかった。信じた通り、やっていればいいんだ。音も光も全てが鳴り止むとき、僕は作品の前に独り——。あの感覚を言葉で表現するには、まだまだ時間が必要になりそうだ。

 この作品は、独りで見るのがいい。自分と作品と、一対一で向かい合うときこそ、この作品の本質に迫る瞬間といえよう。1名様限定——そんな贅沢な展示ができる日をただひたすら待ちわびている。

 なかなか寒さが訪れない今秋…まさに今は、Long Autumn。あと一ト月、どれだけの人たちがこの作品と向かい合うのだろう。そしてどんなドラマがあなたの心象に呼び覚まされるのだろう。そこにどんな風景が広がるのか? 僕が知りたいのは、ただそれだけ。