2008 全景
例年どおり、全開全力で駆け抜けた一年だった。年明けから始まったNHK教育「からだであそぼ」の音楽制作が今年一番の仕事になるであろうという予想は、嬉しい方向に外れた。
■ポピュラスケープ HD



夏には、スパイラルでポピュラスケープ展に参加。愛知万博で上映された映像作品で僕が音楽を担当した作品。万博以来はじめてとなるハイビジョン上映を実現して、ようやく、この作品の魅力を伝えることができたのではないかと思う。なにより、この僕自身も、再びこの作品の魅力を再確認することができた。もっとこの想いを、沢山の人たちに伝えなければならない。そのためにも、もう少し、環境が整うまで時間が必要になるだろう。でも、それも直に…そう願う。


■BankART Life II「心ある機械たち」



この展覧会と併行して準備を進めていたのが、秋に開催されたBankART Life II「心ある機械たち」展への出品準備。これまで制作したインスタレーション3作品を一挙に展示させていただき、個人的には「川瀬浩介レトロスペクティブ」といった気分に浸っていた。横浜では、トリエンナーレも開催され、街全体がアートに染まった80日間——この期間を通じて築いた信頼が、僕にとっては最も大きな財産となった。多くの人たちの協力なくしては、今回の出展は実現できなかったことだから。そしてきっと、この続きの物語が、そう遠くないうちに始まりそうな予感がしている。





■フラワーファンタジア(光都東京2008)
「心ある機械たち」展が開催中に準備を進めていた案件が、これ。東京・丸の内 仲通りのイルミネーション「フラワーファンタジア」のための音楽制作。ポピュラスケープで確立した「直球勝負のロマンティックストーリー」を、ここでも包み隠さず、全てをさらけ出して表現した。



「エコ」をテーマにしたイベントということもあって、スピーカーの数も最小限にして音量も控えめに設定。空間に支配的な音を配置するのではなく、光の森の中で聞こえる精霊たちのさえずり…そんなイメージで、音数も最小限に抑え、フレーズも断片的に聞こえてくるよう設計した。そうした構造ゆえ、当然、お客さんが沢山いらっしゃると、音は聞こえなくなるのだが、それにあわせて音量を上げてしまっては、音に音を重ねて塗りつぶすことになってしまうため、あえて、限界ギリギリ、小さい音量に設定。生花で埋め尽くされた「フラワータワー」の麓から微かに聞こえる音楽…奇麗な調べが耳元をかすめたら、その音を探すように「声を潜めてそっと耳を澄ませてみようよ」なんて、そんな気持ちを少しでも感じてもらえたら、まさにテーマである「エコ」を実感してもらえる瞬間だな…と、相変わらずのロマン派ぶりを発揮してご来場いただく皆さんにそっと提案してみたのだけれど…そんなことは通じた気配もなく、皆さん、素敵な笑顔を浮かべて光の森を楽しんでいらしたようだ。
でも、それでいいんだ。こんな時代に笑顔が満載だなんて…そのお役に立てたのなら本望だから。意識することはないけれど、なくなると寂しく感じるような音楽…そういう仕事をずっと実践したかったのでね。お陰さまで、クライアントの皆様にも好評で…また次の冬に、出逢えますように。
この「フラワーファンタジア」の準備を進めているころから、休みらしい休みがなくなり始め…気付けば、この年末まで、二ヶ月ほど、無休状態に陥っていた。まだナイショにしておかなければいけない案件もいくつかあり、全てをこなすためには、連日3案件くらいを独りで進める日々…横浜での展示も最終段階へきて、来客が駆け込むように訪れ始め、それに便乗して僕自身、日々のつもったものを吐き出そうと、遥々来場いただいたお客様と横浜で盛り上がったりしたら、余計に体力を消耗してしまい…。横浜での展示終盤には、あまり嬉しくない知らせも届いたりして独り勝手に動揺したりして…。その最中、最大級の山場が訪れようとしていた。去る11月14日と12月20日に行なわれたダンス・パフォーマンスの音楽制作だ。仕込、搬入、PA設置、音響、演奏…全てを独りでこなす、責任山積みの「究極のお独り様状態」に挑んだのである。
■踊る内臓 THE LIVE @ 「ひびのこづえ展 2LDK星」
東京・東陽町にあるギャラリー エー クワッドで今冬開催されていた「ひびのこづえ展 2LDK星」にて、ダンス・パフォーマンスが行なわれた。今回も音楽担当としてお声かけ頂き、初日の11月14日には、オープニグパーティのサプライズとしてバレエ・ダンサー、三倉加奈さんと1ステージ。12月20日には、森山開次さんが登場して2ステージを披露。音楽は、NHK教育「からだであそぼ」の1コーナーとして制作された「踊る内臓」の音源をその場で即興でリミックスして演奏する…という試み。いわば「踊る内臓 THE LIVE」といった企てだ。ダンスも音楽も、一切リハーサルなしの状態で当日を迎えた——「ぶっつけ本番」——スリル満点である。
このための準備が…思いのほか、難航してしまったのだ。難航した…というより、やっぱり僕のことだから、細密に仕込をしすぎてしまったのである。
だがしかし、その甲斐あって、自分でも驚くほど、楽しんで演奏が行なえた。特に開次さんとの掛け合いは、バトル?と思わせるほどの内容で、音楽で言えば、JAZZ。相手の動きに合わせて音を出し、音に合わせて動きが変化…シーンチェンジをしたければ、欲しい音、欲しい動きを求めて、お互いがアイコンタクトで求め合う…身体で音を求め、音で身体を求め…そして、会場のお客さんと一体となる瞬間を待ちわびる——即興による生み出される奇跡の瞬間を、目撃者となった満場の観客と共に、永遠の記憶として心に焼き付ける…嗚呼。相変わらずのロマン派ぶりで、筆が暴走したらしい(反省)。
来場いただいた知人曰く、僕が一番楽しそうだったようだ。自分でも意識がある。確かに、終始笑顔だった。3ステージ、それぞれの魅力に溢れた瞬間がいくつもあった。音楽も、即興ならではの魅力が存分に発揮されて、各回、全く違う表情をだせたように思う。特に最後は、かなりアバンギャルドな展開となり…自分でも、どうなるのか、ハラハラしながら演奏していたのだが、それが緊張感を生んだのだろう。終盤、こづえさんが心配されて話しかけてくださったのを無視するほど、集中していた(笑)。開次さんの胸を借りて…いや、手のひらの上で遊ばせてもらったような気分だった。こんな時間を凄くことができるだなんて…あとから思い返すと、なんと贅沢なことだったろう。本当に、これ以上楽しい演奏は、これまでに記憶がない(そもそも、演奏なんてほとんどしないのだが)。
踊る内臓 THE LIVE——この先が、ある…と、いいな。だって、あれだけお客さんが楽しんでくださったのだから。終演後「CDはないんですか?」「着メロとか、欲しいです。膀胱〜〜〜! って音が鳴ったら、楽しいもの」「内臓ダンス、家で踊りたいからDVDになったらいいのに」——そんな数々の熱狂のコメントが、撤収を急いでいる僕の元へお客さんから直接届けられた。お子さん連れの方が多かったのだけれど、みんな、嬉しそうな表情を浮かべてくださっていて…そうした瞬間に遭遇すると、心が弾む。こんな自分が、誰かのためになれたなんて…これ以上の嬉しいことは、ないもの。
当日の写真がないのが残念だけれど、ネットで検索してもらえれば見つかるはず。僕もいくつか確認しました。撮影禁止だったんだけれど、ね…。でも、マナーを破ってまでも誰かに伝えたくなる、そんな貴重な出来事だったと思うと、それはそれで、光栄なこと。「この熱狂の続き」を生み出すために協力してもらえるのなら、僕個人としては、この程度ならばむしろ歓迎したい。著作権法も、現状と照らし合わせてもっと柔軟に対応できるように変わっていってほしいな。現状では縛りが多すぎて、自分自身も窮屈だから。
本番を終えて、一足早く、仕事納めかと思うも、まだ発表できない案件についての続きが早速襲いかかってきた。流石に1日だけ、風邪でダウンしたが(フラワーファンタジアの仕込が雨。チェックは深夜までにおよび寒さでやられた)、朦朧としながらも作業を続行し、29日をもって、無事、仕事納めを迎えた。
「心技体」を期した2008年。それは果たして、実現できただろうか? 思えば、体調を崩すことが多かった一年…これだけプレッシャーを独りで抱え込めば当然か? 来る新年は、和やかな毎日が過ごせるよう、これまでしばらく全く足りていなかった様々な面を充実させていきたい。結局今年も、プロフィールの項目ばかりが充実していくだけで身が伴わないのは、今までの僕の歩みそのままだった…。明日の心配が尽きない暮らしは、これからもまだまだ当分、続いていきそうだ。
春を迎えるまでに、いくつか新たなお知らせができるといいのだけれど…。さてさて、どうなりますやら。



簡単に開けない道だからこそ、その向こう側に到達したとき、道中のドラマが鮮やかに蘇ってくるのだろう。
「君に物語はあるかい?」
僕には、ある。なかなかの、波瀾万丈物語が、ね(笑)。
相変わらずの長文だ。まだ語り足りないくらいだけど(苦笑)。
よいお年を。健やかなる新年でありますように。
終わりに、改めて。今年の全ての始まりを今一度!
■NHK教育「からだであそぼ」音楽担当
ここで紹介した「踊る内臓」始め、「ケインのたいそう」他、僕が担当したコーナーは、新年も放送されます! 放送スケジュールは、番組公式サイトでご確認ください! 是非、お見逃しなく!
【参考】踊る内臓 プロダクションノート
もう直き、「踊る内臓のヒミツ」その3を更新予定です。
